ANALYSIS & COLUMN
アマゾンのタブレット戦略 [後篇] (♥)
フォレスター社が分析するアマゾン・タブレットは、Kindleがそうであるように、デバイスから独立したクラウドに「実体」を置くビジネスモデルの一部である。しかし、タブレットの場合はAndroid機を全体として、新しく形成されるアマゾン・プラットフォームで包摂するという形をとる。自社タブレット+独自プラットフォームというアップルのコピーではなく、Android市場全体がアマゾンのコンテンツ/サービス・プラッフォームをサポートする形にエコシステムをデザインしていくということだ。GoogleのAndroid MarketがアップルiTunesに比べて貧弱な現状を一変させるという役割を果たすことで、デバイス・ベンダーも歓迎する。これは非常に巧みな戦略と言える。[全文=♥会員]
E-Book価格問題ノート(1):価値と費用
No.48 (08/18)に掲載した「E-Bookの価格問題」の記事(本日一般公開)について、読者の方からコメントをいただいた。印刷本の20~30%引き、という欧米の消費者調査の結果を「だいたい予想していた高数字」と見ておられるが、同意見の方は少なくないと思う。自分が本を買う立場として考えるとそんなところだろう、ということだ。しかし、採算性の読めない(比率的にはハイリスクな)商品群を扱う当事者としては、値引きをしてさらに売上を減らし、赤字を拡大することへの不安は強い。現に、ご指摘のように、コンテンツには「売れないと高くなる」という性質もある。ここでは、本誌なりの問題提起として、価格問題へのアプローチをノートにまとめ、読者諸賢の批判に委ねたいと思う。[続きを読む]
NEWS & COMMENTS
アマゾンのタブレット戦略 [前篇]
米国のIT市場調査会社フォレスター社は8月29日、アマゾンがアップルの最強のライバルになるとするレポートを発行した。(1) 価格、コンテンツ、オンライン通販のいずれにおいてもアップルに対抗できるアマゾンが今秋製品をリリースすれば、今年のQ4だけで容易に300~500万台を販売できる、(2) それによりアップルのみならず他社も製品戦略に変更を余儀なくされる、(3) メディア、ソフトウェア、小売、銀行その他の業界はAndroidタブレット向けアプリの開発に着手する、と指摘している。[続きを読む]
ソニーReader新製品は「ハリー」頼み
米国ソニーは8月31日、Sony Readerの新製品が近く発売されるという情報を確認した。PRS-T1は最新のPearl E-ink6型、タッチスクリーンを採用。Wi-Fi、microSD、2GBフラッシュメモリを搭載している。定評ある注釈機能のほか、米国とカナダの公共図書館からの貸出(ダウンロード)が利用可能。また、E-Book版『ハリー・ポッター』のクーポンがバンドルされる。米国内販売価格は149ドルで10月のリリースとなる。欧州価格は165ユーロとやや高め。しかし日本についてはまだ発表はない。[続きを読む]
6割が違法コピー:ドイツの海賊幻想
ドイツの書作権侵害を研究しているGVUなどの団体が市場調査会社のGfKに依頼して行った調査の結果が8月30日に発表され、昨年1年間で2,300万冊がダウンロードされたE-Bookのうち約60%が違法であったことが「明らかになった」。ドイツ人の多数が違法行為に関係しているという、事実とすれば由々しいこと。The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏はすぐに反論を出し、推定の根拠が間違っているこのレポートは「詐欺」でありまったく信頼できないと決めつけた。客観的に見て、どうもこの指摘が正しいようだ。それにしてもなぜ。(右のイラストは海賊版の恐怖を、強迫神経症的に表現した傑作!?)[続きを読む]
デジタル事業の好調に救われたB&N1Q決算
B&Nは8月30日、四半期(FY1Q12)の決算を発表し、デジタルビジネスの好調が続いているものの、引続き連結ベースで5,700万ドルの損失を計上した。総売上は前年同期で2%増の14億ドル。B&N.com(オンライン/E-Book)の売上は37%増えて1億9,800万ドルとなった。こちらはNook Touch、NookColorなどのデバイスや前年比4倍増のE-Bookが寄与した。しかし、店舗販売は3%落ちて10億ドルあまりの水準となり、その上デバイスや玩具、ゲームの店頭販売を除いた印刷書籍・雑誌はさらに下げ幅が大きかった。デジタルはいよいよ明るく、紙はなお暗い。しかしスピード感とバランスは悪くない。[続きを読む]
ランダムハウスがデジタル化で利益率上昇
ベルテルスマン・グループの中核的出版社である米国ランダムハウス社は2011年前期の決算を発表し、E-Book販売が対前年同期で3倍増となり、200%あまり上昇したことを明らかにした。海外も含めた売上は7億8,700万ユーロ(11億3,700万ドル)で、僅かに減少したが、比較可能な事業では若干の上昇。売上高利益率はデジタルコンテンツが貢献して10%台の大幅な改善を続け、2億6,900万ユーロ(約300億円)となった。約34%というのは、日本では夢のような数字だ。総売上に占めるデジタル比率は10%となった。[続きを読む]
CLIP BOARD
- ヤフー、海賊版問題は「プロバイダ責任制限法で」 (2011/8/30 新文化 オンライン)
- パピレス、「電子貸本Renta!」でEPUB形式での作品配信を開始 (2011/8/29 MdN Design Interactive)
- [FT] 米書店最大手B&N、電子書籍事業が倍増へ (2011/8/31 - 日本経済新聞)
- 出版状況クロニクル40(2011年8月1日~8月31日)
- 電子書籍と本の未来 仲俣暁生さんが選ぶ本 (2011/8/28 朝日新聞, ブック・アサヒ・コム)
- 日本人読者、ゆっくりと電子書籍へ向かう (2011/8/31 IT Media)
- 技術評論社、電子書籍販売サイト「Gihyo Digital Publishing」を開設 (2011/8/30 IT Media)
- 楽天、電子書籍ストア「Raboo」でPCからのコンテンツ購入に対応 (2011/8/29 Internet Watch)
- 有名女性誌を定額で楽しめる「ビューン for Woman」--月額250円で12誌 (2011/8/29 CNET Japan)
- 米Barnes & Nobles、スヌーピーのPeanutsシリーズの双方向電子書籍を「NOOK Color 」電子書籍端末向けに独占提供 (2011/9/1 hon.jp)
- 仏大手出版社La MartinièreとGoogleと絶版書のスキャンで合意、Google eBookstoreで販売も (2011/8/29 hon.jp)